ユースケースで考える
RPAで「できること」「できないこと」の境界線
RPAは、判断しない
様々な業務を自動化できるのではないか?と期待が膨らむRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。ですが、当然ながら、何でもできる“魔法のツール”ではなく、できないことも多くあります。なかでも、RPAツールでは対応不可能とされるのが、「地図など複雑な画像から文字を認識すること」や「CAD画面の認識」、「タッチパネルの操作」などです。これらは、現状のRPAツールでは対応できず、今後の技術進化に期待するしかありません。
次に、対応できないことはないものの、検討が必要なのが「条件分岐」です。例えば、入力・転記業務でも、取引先ごとに入力内容・項目が異なるなど条件分岐が多いケースでは、これらを細かく実装する必要があります。この開発コストと、自動化による効果のバランスをよく検討しなければ、「開発にばかり時間とコストがかかり、費用対効果がでない」ということになりかねません。ここで特に注意しなければならないのが「RPAは判断しない」という点です。事前にすべての条件を設定する「条件分岐」と異なり、そのときの状況などをもとに柔軟な対応が求められる「判断」は、RPAで自動化することはできません。RPAで「できる領域」と「できない領域」をしっかり見極めて、活用することが重要です。
どこまでRPA化し、どこから人が対応すべきか……ユースケースで考える?!
ではRPAで、できる領域とできない領域の境界はどこにあるのでしょうか?もちろん、企業や業務の状況にあわせて異なりますが、ここではよりイメージしやすくなるよう、具体的なユースケースを紹介しましょう。
<ケース1>見積書の作成
こういった場合は、商品の単価や取引先情報を参照し、ひな形を作成するところまでをRPAで自動化し、最後の判断・調整は担当者(人)がおこなう形がよいでしょう。
<ケース2>交通費精算
申請内容をベースに、経路を検索、もっとも金額が安いルートかどうか、金額が正しいかどうかを確認し、チェックするところまではRPAで自動化できます。ただし、「駅名が間違っていた(駅名が存在しない)」「最安ルートではないが、例外的に認められることもある」などのケースも。こういった点は、RPAで確認・照合した結果をもとに人が最終判断するフローをお勧めします。
最初から「100%自動化」を目指すのではなく、どこまでRPAを使うかの見極めを
次世代型RPAではAIを搭載することで、業務の判断までも実現すると言われていますが、現状のRPAツールはあくまでも「事前に設定した内容に基づいて処理を実行する」ものです。RPAに任せるのか?、人が判断するのか?の境界として「その内容を条件分岐として作りこむことが可能か」を基準としてもいいでしょう。状況判断が必要で条件を設定できないケースや、条件があまりに複雑になってしまうケースは、RPAで自動化するのではなく、人が判断する領域と言えそうです。
「RPAで全部を自動化はできない」となると残念に感じるかもしれませんが、1つの業務の70%程度を自動化できれば、人は残りの30%に注力できるようになります。「30%は自動化できない」ことばかりにフォーカスしがちですが、RPAの得意とする領域を手軽に自動化することで、手作業を削減できる効果は十分に大きいはずです。RPAが得意とする領域と、引き続き人が担当する領域を明確にすることこそが、着実に業務効率化を進める上で近道となるのではないでしょうか